インターネットを通じて広告写真を販売するという現在の形のストックフォトビジネスの原型が形作られたのが2003年あたりからでしたが、ストックフォトの創成期を経た2010年頃から、旧来のストックフォトに対する批判的な声が一部のフォトグラファーたちから発せられるようになりました。これまでの(人物の)ストックフォトは商業的な分かりやすさを追求するあまりリアルさを無視し不自然で稚拙な写真を量産しているという批判です。
実際、ストックフォトの創成期には過剰演出気味な、誰にとっても分かりやすいポーズをつけた笑顔の若い女性の写真を撮ればよく売れたため、分かりやすい演出写真(コレオグラフィー)が量産されていました。
こうした不自然な写真の大量生産に異を唱えたのが、リアリズムや芸術性を重視する一部のフォトグラファーや一部の顧客(写真の購入者)でした。彼らは「Stocky(いかにもストックフォト的な)」という意味の形容詞を付けてそのような演出過剰気味の写真を批判し、ストックフォトはもっと自然でクリエイティブであるべきで、つまりは「not Stocky」であるべきだと主張しました。
このような動きはノット・ストッキズム(Not Stockism)と呼ばれています。ノット・ストッキズムはとりわけブルース・リヴィングストン(Bruce Livingstone)の周辺に集まる、リアルで自然な写真や、芸術性を志向する一部のフォトグラファーたちによって主張され、欧米で徐々に影響力を強めていきました。
リヴィングストンは元々のiStockphotoの創始者で、2006年に当時のiStockphoto(現iStock)がGettyimagesに買収された後も2009年まで(Gettyimages下の)iStockphotoに残ってストックフォト部門の責任者を務めていました。その後2013年にnot Stockyな写真を集めることで有名なストックフォトエージェンシー、Stocksy Unitedを設立して大きな成功を収めています。
現在アメリカやヨーロッパでは反コレオグラフィカルでより自然な写真(「オーガニックな写真」と呼ばれている)や、芸術性を志向する写真などのnot Stockyなストックフォトが好まれていますが、日本では(以前ほどのStockyさは薄まったとはいえ)Stockyな写真の影響力はまだ強いようです。
トウキョウストックイメージズ★では、ストックフォトの世界市場におけるノット・ストッキズムの受容をふまえ、積極的にノットストッキーな写真を取り入れていきます。
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